今、3月に開催された日本アレルギー学会主催の「総合アレルギー講習会」のWEBオンデマンド受講をしています。
その中のアトピー性皮膚炎のセッションで学んだ(再確認した)「アトピー性皮膚炎の治療で最も大事なこと」と言うのが、
★治療の目標は何か、また行う治療の意味(目的)は何なのか、を患者さん(や家族)と共有すること
です。
「病院で以前(健診の時も含む)貰った薬を塗ると良くなるんですが、その後また悪化して、再び塗ると一旦良くなるけれど又悪化しての繰り返しなんです」
という訴えで受診されるお母さん・お父さんが少なくありません。
お薬手帳でこれまでどんな薬が出ているのかを確認すると、MILDランクのステロイドと保湿剤や保護剤を混合したものだけだったり、保湿剤・保護剤単独の処方があってもステロイドと同じく1-2回/日の指示になっていることが多いようです。
残念ながらこの方法では、塗ると一旦良くなっても止めるとすぐ再燃するのを防ぐことは難しいことが多いのです。
その理由を説明するとき、いつも「肌のケアは車のボディケアと同じ」とお話ししています。
●車のボディのお手入れは何をする?
・・・ 洗車して汚れを落として、ワックスを塗る
●もし車に錆が出てしまったらどうする?
・・・ 車屋さんに持って行ってさび落としをしてもらう
これを肌に当てはめたらどうなるでしょう??
●肌のお手入れは何をする?
・・・ 洗って(必要なら石鹸やボディーソープで)汗や汚れを落として、保湿剤を塗る
●もしも湿疹が出てしまったら?
・・・ 医療機関に行ってお薬(ステロイド)を貰って塗る
ということになります。
ここで大事なのが何を何回塗るかです。
●青空駐車で毎日あちこち走る車と、車庫保管で週末だけ乗る車と、ショールームに展示してある車とで、ワックスの頻度は同じになる?
・・・ そんな訳はないので、使用状況によって洗車・ワックスは変わりますよね。
・・・ 肌を小まめに観察してあげなければ、いつ塗ったらいいかが分かりません。
●浅い錆でも深い錆でも、同じさび落としで大丈夫?
・・・ 深い錆に弱い錆落としでは錆が取り切れません。かといって浅い錆に強い錆落としを使えばダメージがあるかも。
・・・ 湿疹の程度に応じてステロイドのランクを使い分けなくてはなりません。
それをこのことを処方に置き換えると、
●湿疹がなるべく出てこないように、肌がカサカサしていないか小まめにチェックして保湿剤(尿素製剤やヘパリン類似物質など)や保護剤(ワセリンなど)を十分必要な回数塗ってもらう。
●湿疹が出てしまったら、ひどくならないうちにステロイドで抑える。ステロイドのランクは湿疹の程度によって、軽い=MILD、強い=STRONG、ひどい=VERY STRONGなどと使い分ける。
ということになります。
適切な錆落とし剤で処理すれば車が綺麗になるのと同様に、適切なランクのステロイドを塗れば湿疹は一旦落ち着きますが、綺麗になったからと言ってすぐにステロイドを中止したり、保湿まで中途半端になってしまったら、あっという間に元の木阿弥になってしまいます。
症状がしっかりと落ち着くまでは、なるべく小まめに(少なくとも1か月に1度程度は)受診をして、治療の効果を判定して次のステップを決めていくようにしたいですね。